悪天候

雷の作業中止基準。雨雲レーダーの「あと何時間」で切り上げを判断した日

雷の作業中止基準。雨雲レーダーの「あと何時間」で切り上げを判断した日

本記事は筆者の林業現場での実務経験および公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。症状の判断や治療の代わりとなるものではありません。実際の対応については医療機関・専門家にご相談ください。緊急性が疑われる場合は、ためらわず119番通報してください。

雷が鳴ったら中止して避難する。ここまでは誰でも分かります。難しいのは、避難したあとです。鳴り止むまでどれくらい待つのか、それともその日はもう切り上げるのか。今日、水俣の下刈り現場でその判断を一人でしました。

退避したあとに見るべきものと、判断の目安

雷鳴が聞こえた・雷光が見えた時点で、距離を測る前にまず安全な場所へ移動します。これは前提です。問題はそのあとで、次の手順で判断しています。

  1. 車や建物などの安全な場所へすぐ移動する
  2. 雨雲レーダーを開き、自分がいる場所に雷を伴う雨雲があと何時間かかり続けそうかを確認する
  3. 最後の雷から30分ほど経ち、レーダー上の雨雲(赤マーク)も抜けていれば再開を検討する(気象庁の解説と建設業労働災害防止協会の指針を根拠にした目安で、法律で決まった数字ではありません)
  4. レーダーが「あと2時間以上、雨雲が居座る」ような表示なら、“待てば再開できる”としても、その待ち時間そのものをコストとして数える。濡れたまま2〜3時間待機して体が冷え、風邪をひいて翌日以降の仕事に響く方が、その日を切り上げるより損だと判断してよい

今日は8時半ごろから土砂降りと雷が同時に来て、レーダーは自分の現場に2時間後まで赤マークが乗っていました。3時間待って再開するより、濡れて冷えたまま待つ方が明日の仕事に響くと判断して、そこで作業を終えました。

そもそも下刈りは「悪天候なら中止」が法律で決まっている

この判断には、そもそも待つか迷う余地自体が小さいという背景があります。労働安全衛生規則第483条は、造林等の作業を、強風・大雨・大雪等の悪天候により中止しなければならない作業のひとつに挙げています。下刈りは造林作業に含まれるので、この規定の対象です。

ここでいう「大雨」は、解釈例規(昭和46年4月15日付け基発第309号)で「1回の降雨量が50mm以上の降雨」と定義されています。さらに、実際に悪天候になっていなくても、大雨や雷の気象注意報・警報が出て悪天候が予想される場合も含む、とされています。今日のような土砂降りと雷が重なった状況は、この基準にそのまま当てはまります。待てるかどうかを迷う前に、中止は前提として決まっていたということです。

「音で距離を測る」が使えない場面もある

以前、電波の入らない現場で雷鳴の秒数を数えて距離を測る方法を書きました。今日は電波が入る現場だったので、音を数えるより先にレーダーで待機時間の見通しを立てられました。逆に言えば、電波がない現場では今日のような判断はできず、音を頼りにするしかありません。現場に着いたら、まず電波が入るかどうかを確認しておくと、いざというときの判断材料が変わります。

もうひとつ、最初に聞こえた音は雷か確信が持てませんでした。遠くでゴロゴロと鳴ったとき、最初は飛行機の音かと思いました。3回目に鳴った音で確信に変わりましたが、そこから車までは距離があったので、確信を待たずにもっと早く車へ向かい始めればよかったと思っています。音の正体に迷っている数十秒も、雷雲は近づいてきます。

濡れて待つことを、判断材料に入れる

雷そのものの危険は退避行動でカバーできますが、その後の体調管理は別の話です。土砂降りで全身が濡れた状態で1〜2時間以上車内で待機すると、体温はかなり奪われます。真夏なら熱中症を避ける動きをしますが、雨で濡れているときは逆に体を冷やす方向のリスクがあります。翌日以降も現場に出る個人事業主にとって、風邪をひいて動けなくなる方が、その日1日を切り上げるより損失が大きいです。一人親方の工程管理にも通じますが、休んでも代わりがいない働き方だからこそ、体調を崩さないことを優先する判断があってよいと思っています。

今日は3人で6時半から作業を始め、中止までの2時間半で進んだのは0.1haでした。下刈りの1日あたりの目安面積からすると本来ならもっと進むはずの人数と時間ですが、これは中断した日の数字として書いておきます。もっと進めたかった気持ちはありますが、雨の日が丸ごと飛ぶときと同じで、こればかりは天候次第です。

次に現場で雷が鳴ったら

まず退避、これは迷う余地がありません。落ち着いたら雨雲レーダーを開いて、自分の場所にあとどれくらい雨雲が居座りそうかを見てください。それが自分の体力や翌日の予定と釣り合わない待ち時間なら、無理に粘らずその日は切り上げていいと思います。判断を一人で背負う現場ほど、こういう目安をあらかじめ持っておくと迷いが減ります。

この記事を書いた人

藤川翔(屋号:希翔)

2026年9月28日、水俣の下刈り現場で3人作業中に雷に遭遇し、レーダーの待機時間と体調管理を天秤にかけて作業中止を判断した当日の経験をもとに書いた。

この記事の裏話や、体験の背景はnote(山守ラボ)でも綴っています。