下刈り

刈払機のキックバック対策。『防ぐ』より『食らっても足に刃が来ない刈り方』の話

刈払機のキックバック対策。『防ぐ』より『食らっても足に刃が来ない刈り方』の話

本記事は筆者の林業現場での実務経験および公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。症状の判断や治療の代わりとなるものではありません。実際の対応については医療機関・専門家にご相談ください。緊急性が疑われる場合は、ためらわず119番通報してください。

下刈りで刈払機を使う以上、キックバックは避けられない。切り株や、茂みに隠れた枯れ枝に刃が当たった瞬間、機械ごと右から自分の方へ跳ね返ってくる現象だ。今日も現場であった。

何年やっても、これをゼロにはできない。だから自分は「キックバックを起こさない」より、「起きても刃が足や顔に来ない刈り方」を優先している。具体的にはこの5つだ。

跳ね返った刃がどこへ流れるかは、この構えで決まる。体の正面で大振りしていると、刃は自分の足の前を横切る。右斜め前で小さく振っていれば、跳ね返っても体から離れる方向に抜けるか、空を切って止まる。同じキックバックでも、「ヒヤッとした」で終わるか病院に行くかは、ここで分かれる。

なぜ「防ぐ」を諦めたか

相手が地面や茂みの中に隠れているからだ。刈る前にどれだけ足元を見ても、青草の下の硬いものは全部は見えない。今日の2回も、1回は切り株、もう1回は茂みの奥の枯れ枝で、どちらも刈ってみるまで分からなかった。

これはベテランでも変わらない。林野庁が公開している下刈りの災害事例には、キックバックによるケガが並んでいる。研修3年目・20歳の左足甲の切創。36歳の右足の大腿筋挫創。どちらも作業内容は「下刈り」、原因は「キックバック」だ。3年やった人間が、毎日やる作業で足をやられている。

時間帯も関係する。今日のヒヤリは午後だった。疲れると腰が伸びて、振りが大きくなって、足が揃う。さっきの5つが崩れるのは決まって後半だから、午後こそ意識して構えを戻す。乾いた萱で刃が通らないときに、通らないからと力任せで大振りするのも同じ危険だ。

もう一人いるなら、距離の話が先に来る

ここで、8月末に佐世保であった事故に触れておきたい。

草刈りをしていた66歳の男性が、近くで作業していた知人の草刈り機の刃で右足を切られ、9月3日に亡くなった。大量出血だった。知人は、男性に話しかけようとして近づいたのだという。国民生活センターも9月に入って、刈払機作業中の死亡事故が報道されているとして注意を呼びかけている。

これはキックバックですらない。ただ近くにいて、刃が当たった。刈払機の周りは、刃が届く範囲に飛散を足して2〜3メートルが危険区域とされる。話しかけようと一歩踏み込む、その一歩でこの線を越える。現場では毎日やっていることだ。

2人以上で入るときに決めているルールはこうだ。

伐木で「声掛け」だけでは防げなかった大怪我のときも、声は出ていた。立っていた場所が悪かった。

飛び石と跳ね返りは防具で受ける

刈り方と立ち位置で減らせない分は、防具で受けるしかない。刃が石や枝を弾くと、破片は顔とすねに飛んでくることが多い。

まとめ

キックバックはなくせない。できるのは、食らったときに刃が自分にも相方にも当たらない刈り方と立ち位置を、疲れていても崩さないことだけだ。

次に刈払機を握ったら、自分が刃のどの面で草を切っているか、一度だけ確かめてみてほしい。右側で刈りにいっている瞬間が、思ったより多いかもしれない。

そもそもチップソーや2枚刃のような金属刃を使う場面自体を減らせないか、という視点もある。刃の種類と使い分けでは、傷をつけたくない場所やキックバックのリスクを抑えたい場所ではナイロンコードに替えている、という基準をまとめた。

この記事を書いた人

藤川翔(屋号:希翔)

下刈りの現場でヒヤッとした日に書いた。朝礼で、8月末に佐世保で起きた草刈り機の死亡事故のニュースを共有し、距離と構えを確認してから山に入った。数値で検証した話ではなく、長年刃を入れてきた体感と、公的な災害事例・報道を突き合わせたものとして読んでほしい。

この記事の裏話や、体験の背景はnote(山守ラボ)でも綴っています。