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マダニ感染症SFTS、今年もう104人。『西日本だけの話』ではなくなっていた

マダニ感染症SFTS、今年もう104人。『西日本だけの話』ではなくなっていた

本記事は筆者の林業現場での実務経験および公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。症状の判断や治療の代わりとなるものではありません。実際の対応については医療機関・専門家にご相談ください。緊急性が疑われる場合は、ためらわず119番通報してください。

「マダニなんて、うちの方じゃ聞かないよ」——愛知県で山の仕事をしている知人から、そう言われたことがある。マダニ対策といえば九州や四国のイメージが強く、東海や関東の現場ではどこか他人事として扱われがちだった。

だが2026年、その前提は静かに崩れつつある。7月末時点の患者数はすでに104人。しかも都道府県別の内訳を見ると、上位に並ぶのは愛媛、静岡、愛知、三重——「西日本だけの話」では、もう説明がつかなくなっている。

今年もすでに104人、6年連続で100人超えというペース

医療系ニュースの報道によれば、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の患者数は2026年7月12日までの累計で104人。これで6年連続、年間100人を超えるペースになるという。

100人という数字だけ聞くと大きくは感じないかもしれない。だが、これは「まだ7月」の数字だ。梅雨明け直後、マダニの活動が最も活発になるこれからの季節を待たずに、すでに昨年までの年間水準に迫っている。慢性的な流行が一段落するどころか、毎年当たり前のように更新され続けている数字、ということになる。

「西日本だけ」の思い込みが通用しなくなった理由

SFTSは2013年に国内で初めて確認されて以来、長らく「西日本中心」の感染症として扱われてきた。実際、林業関係者向けの注意喚起も九州・四国の資料が中心だったし、マダニ対策の基本で紹介した筆者自身の被害経験も九州の現場でのものだ。

ところが厚生労働省の公表資料では、2025年に関東・北海道でも感染症例が確認されたと明記されている。マダニは西日本の山にだけ棲んでいるわけではない。ウイルスを持った個体が、今まで「対象外」だと思っていた土地の草むらにいてもおかしくない、という段階に入ってきた。

都道府県別ランキングに透けて見える「東海シフト」

2026年のこれまでの都道府県別患者数では、愛媛県が9人で最多。ただしそれに次ぐのが静岡7人、愛知6人、三重6人と、東海地方が固まって並んでいる。

静岡・愛知・三重といえば、茶畑や果樹園、里山に隣接した林業・農業の現場が広がる地域だ。ランキングの数字の裏には、そうした現場で実際に高熱と激しい嘔吐に苦しんだ誰かがいる。統計の並び順ひとつが、地図上でじわりと色を塗り替えているように見える。

致死率27%——「そのうち治る」では済まされない数字

厚生労働省の資料によれば、国内のSFTS致命率は27%。同じウイルスによる感染症でも、中国での報告(10%程度)よりかなり高い水準にある。

4人に1人が命を落とす計算になる、と言い換えるとその重さが実感しやすい。発熱と消化器症状だけを見て「夏バテだろう」「食あたりかもしれない」とやり過ごせる病気ではない。さらに、感染した猫や犬との接触からヒトに感染した事例や、患者から医療従事者へのヒト-ヒト感染も国内で報告されており、リスクは山の中だけでなく、帰宅後の生活圏にまで持ち込まれる可能性がある(詳しくは犬・猫からの感染について)。

明日の現場が、東海でも関東でも

冒頭の「うちの方じゃ聞かない」という感覚は、悪気があるわけではない。ただ、データが示している実態とは、少しずつずれ始めている。

マダニに気づかず咬まれてしまった場合の症状の見分け方や、絶対にやってはいけない対処法についてはマダニ対策の基本にまとめてある。一人での作業中に発熱などの異変が出た場合の連絡体制については、単独作業のリスク管理も合わせて確認しておきたい。

「西日本だけの話」が通用したのは、もしかしたら去年までだったのかもしれない。

出典: マダニ感染症SFTS 6年連続100人超(医療介護CBnews、2026年7月27日)SFTSに関するQ&A(厚生労働省)

この記事を書いた人

藤川翔(屋号:希翔)

本記事は感染症の全国的な発生動向という公的統計・報道に基づく内容のため、筆者個人の被害体験ではなく行政資料をもとに構成している。現場での具体的な咬まれ方の特徴や応急処置については、実体験を踏まえた[マダニ対策の基本](/posts/madani-taisaku/)で解説している。

この記事の裏話や、体験の背景はnote(山守ラボ)でも綴っています。