スズメバチの巣を見つけたら?林業・下刈り現場の対処法と作業を止める基準

本記事は筆者の林業現場での実務経験および公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。症状の判断や治療の代わりとなるものではありません。実際の対応については医療機関・専門家にご相談ください。緊急性が疑われる場合は、ためらわず119番通報してください。
林業の現場では、スズメバチの巣は「見つけてから対処する」より「気づいたときにはもう近くにいる」ことの方が多いです。先日の下刈りでも、枝木の山の中にあった巣に気づかないまま刈り進めていて、ふと見たら周りを5〜6匹が飛んでいました。そうなったときにどう動き、その日の作業をどうするかをまとめます。
巣を見つけたら、まずこの順で動く
- 刈払機やチェーンソーを止める。 刃の回転と振動は巣を刺激します。エンジン音で羽音も聞こえなくなります。
- ハチが周りを飛んでいるなら、その場で動かずにやり過ごす。 しつこく周りを飛ぶ、空中で止まってこちらを狙う、あごを「カチカチ」鳴らす。これは巣に近づくなという威嚇です。手で払うなど素早く動くと、攻撃の引き金になります(森林総合研究所)。
- ハチが離れたら、来た道を戻る方向にゆっくり離れる。 巣の奥側や、まだ刈っていない藪の方へは逃げません。
- すでに複数に襲われているなら、できるだけ遠くへ逃げる。 追いかけてくる距離はオオスズメバチでも80mほどといわれています。腕は振らず、少しかがみ気味に走ります。急斜面や障害物ですぐ逃げられないときは、首から上を服などで隠して身をかがめ、少しずつ巣から離れます(森林総合研究所)。
- 安全な場所まで離れたら、一緒に作業している人全員に巣の位置を伝える。
そのうえで、その日の作業は次の基準で判断します。
- 巣のある一帯は、その日は刈らない。 迂回して別の区画を先に進め、巣の周りは駆除が済んでから戻ります。
- 巣の近くで作業するしかない区画なら、その日の作業を止める。 刈払機もチェーンソーも振動と音が出るので、そっと近づくだけの場合より危険度が上がります。
- スズメバチの巣は、自分たちで処理しない。 業者か自治体に相談します(後述)。
下刈り中は「巣を見つける前」に気づくことが多い
道ばたや斜面の上から見て巣が見えるなら、まだ良い方です。下刈りは自分で藪を刈り開いて進む作業なので、地際や低木の中、枝木の山の中にある巣は、刃が届く直前まで見えません。
私が9月に遭遇した巣は、棚積みされた枝木の中にありました。伐採で出た枝を積み上げてある場所です。私の地域では「ごそ」と呼んでいます。外からは枝しか見えないので、巣があるとは思わずに、その脇を刈っていました。気づいたのは、周りを5〜6匹が飛んでいるのが目に入ってからです。この日は刺されずに済みましたが、もう少し時期が遅かったら刺されていたと思います。
巣が近いサインは、森林総合研究所の資料にも書かれています。
- 周りを飛ぶハチの数が急に増える
- ハチが同じ方向にまっすぐ飛んでいく(巣に帰る途中であることが多い)
私の経験でも、作業道や林道でハチが飛んでいるのを見た日は、その周辺でかなりの確率で巣に行き当たっています。ハチを1匹でも見たら、いったん刈払機を止めて飛び方を確かめるようにしています。この話は蜂スプレーの記事でも詳しく書いています。
巣ができやすい場所と、作業ごとの注意点
| 巣の場所 | 気づきにくさ | 遭遇しやすい作業 |
|---|---|---|
| 土の中・切り株の跡 | 非常に気づきにくい。踏んでから気づく。オオスズメバチに多い | 下刈り、植え付け、歩いての移動 |
| 茂み・低木の中 | 気づきにくい。刃を入れる直前まで見えない | 下刈り |
| 棚積みした枝木の中 | 気づきにくい。枝の陰になって外から見えない | 下刈り、枝木の片付け |
| 木の上・大きな木のうろ | 見上げないと気づかない | 伐倒、枝打ち |
| 小屋の軒下・天井裏 | 比較的気づきやすい | 休憩、道具の出し入れ |
場所の種類は、森林総合研究所の資料にあるハチの巣が多い場所(鳥の巣箱、小屋の軒先や天井裏、木のうろ、茂みの中、切り株の跡や土中)に、現場で遭遇した棚積みの枝木を加えています。
この表のうち上の3つは、下刈りの最中に足元や刃先で出くわす場所です。こういう巣は、見つけた時点でもうハチに気づかれていることが多いので、上の「まずこの順で動く」の1と2が特に大事になります。
時期によって危険度が変わる
森林総合研究所の資料によると、スズメバチの巣作りは5月ごろに女王バチ1匹で始まり、夏から秋にかけて働きバチが一気に増えます。働きバチが多いほど攻撃的になり、刺される事故は8月と9月に集中しています。巣の働きバチは、種類によっては1000匹近くになります。
下刈りの最盛期は、ちょうどこの8月と9月に重なります。夏場の下刈りでは、ハチの巣がある前提で藪に入るくらいでちょうどいいです。
10月以降は、攻撃性の低いオスバチや新しい女王バチが増えてきます。ただ、種類や地域によっては10月以降も働きバチが活発に動くので、秋だからといって油断はできません。
自分たちで処理していい巣と、業者に頼むべき巣
業者か自治体に頼む
- スズメバチの巣すべて(特にオオスズメバチ、キイロスズメバチ)
- 土の中の巣
- 作業する区画の真ん中にあって、迂回できない巣
自分たちで対応を考えてもいい
- 小さなアシナガバチの巣で、作業の邪魔にならない位置にあり、防護装備がそろっている場合
迷ったときは「自分たちで駆除できるか」ではなく「失敗したら命に関わるか」で考えると、判断がぶれません。業者に頼むときの費用の相場と補助金は、頼む前に確認しておくと安心です。
蜂スプレーで対応していいのは、小さなアシナガバチの巣に不意に近づいてしまったときまでです。スズメバチの巣に噴射すると、仲間を呼んでかえって危険になります。その線引きはスズメバチに蜂スプレーを過信しない理由にまとめています。
九州では、特定外来生物のツマアカスズメバチも確認されています。地上10m以上の高い所に巣を作ることが多く、在来のスズメバチとは見つけ方が違うので注意してください。
見つけた巣は、日報と口頭で共有する
巣を見つけたら、その場で済ませずに記録に残します。
- 見つけた日時と場所(GPSの座標か、目印になる木や作業道の位置)
- 巣の種類と、だいたいの大きさ
- どう対応したか(迂回した、駆除を頼んだ、様子を見ている)
- 現場の全員に伝えたか(朝礼や日報で)
同じ現場に翌日以降、別の班が入ることもあります。日報に1行あるだけで、次に入る人が同じ場所に刃を入れずに済みます。
明日からやること
- ハチを1匹でも見たら、刈払機を止めて飛び方を確かめる
- 棚積みの枝木や切り株の周りは、刈る前に一度離れた場所から見る
- 巣を見つけたら、一緒に作業している人に伝えてから離れ、その一帯はその日は刈らない
- 刺されたときの対応は応急処置の記事を、装備は防護服の選び方を確認しておく
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