悪天候

山の天気が変わりやすい理由。晴れ予報で土砂降り、雨予報で快晴だった日

山の天気が変わりやすい理由。晴れ予報で土砂降り、雨予報で快晴だった日

本記事は筆者の林業現場での実務経験および公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。症状の判断や治療の代わりとなるものではありません。実際の対応については医療機関・専門家にご相談ください。緊急性が疑われる場合は、ためらわず119番通報してください。

今朝、天気予報は「晴れ」だった。だから普段どおり山に向かった。

ところが、山に着いて登り始めると、空から降ってきたのは土砂降りの雨だった。スマホでもう一度予報を確認すると、いつの間にか「10時まで雨」に変わっている。仕方なく、その予報を信じて車の中で待機することにした。

そして9時。予報ではまだ雨が続いているはずの時間に、空は急に晴れた。

「晴れ」だったはずが土砂降り、「雨」だったはずが快晴

同じ日に、予報は二度外れた。一度目は悪い方向に、二度目は良い方向に。どちらも、麓で見ている限りではまったく想像がつかない振れ方だった。

山に入って長いが、この日ほど「予報のとおりにいかない」を短時間で二回続けて経験したことはあまりない。腹立たしいというより、単純に「山の天気とはそういうものだ」と改めて思い知らされた朝だった。

なぜ、山の天気はここまで変わりやすいのか

麓の予報とここまでズレる理由の一つは、山という地形そのものが天気を作り出してしまうことにある。

湿った風が山の斜面にぶつかると、行き場を失って斜面に沿って上へ持ち上げられる。これが地形性の上昇気流で、上昇した空気は山の上で冷やされて雲になり、発達すると積乱雲になって強い雨や雷を降らせる(ウェザーニュースの解説による)。低気圧や前線が近づいていなくても、山はこの仕組みだけで自分で天気を崩すことができる。麓が晴れていても山頂で雨が降る、という現象はここから起きる。

つまり、今朝土砂降りに遭ったのは「予報が間違っていた」というより、「予報が対象にしていた場所と、自分が立っていた場所が違った」という方が正確なのかもしれない。

天気予報の“目”には、谷ひとつぶんの隙間がある

もう一つ、技術的な理由もある。気象庁が使う数値予報モデルのうち、もっとも細かい局地モデルでも水平の格子間隔は2kmで、目先数時間程度の現象を対象にしている(気象庁 数値予報解説資料集)。

2km四方を一つの升目として計算している、と考えると分かりやすい。升目の中に谷があって尾根があって、自分がそのどちら側にいるかまでは、この升目は区別できない。今朝、自分が立っていたのはその升目の中の、たまたま雲が発達した側だったのだろう。予報の「晴れ」は嘘ではなく、升目全体の平均としては正しかった可能性がある。ただ、自分がいたのはその平均から外れた一点だった。

この事実を知ってから、天気予報のアイコンを「今日の答え」ではなく「今日の傾向」として見るようになった。

待機している間、蒸し暑さが体にまとわりついてきた

10時までの雨予報を信じて待機している間、車の外はずっと蒸し蒸しとしていた。湿気を含んだ空気が肌に張りつくような感覚で、動いていないのに汗がにじんでくる。

9時に晴れてから作業に入ると、その蒸し暑さは輪をかけてひどくなった。空調服(長袖)を着ていたが、正直まったく太刀打ちできなかった。ファンの風はいつもどおり吹いているはずなのに、体感としては生ぬるい空気をかき混ぜているだけのように感じる瞬間があった。

以前、空調服はハチ対策としても有効だと書いたことがあるが、それはあくまで「万能ではない」という前提つきの話だった。今日はまさにその前提を思い知らされる一日で、熱中症対策の基本で触れたこまめな休憩・水分補給を、いつも以上に意識して挟むしかなかった。装備を信頼しすぎず、体の感覚の方を優先する。今日はその判断が正解だったと思う。

予報は「今日の答え」ではなく「今日の傾向」

雨の予報が晴れに変わったこと自体は、結果としてはありがたい誤差だった。だが、もし逆に「晴れ予報なのに山では大雨」という方向で外れていたら、悪天候での作業中止判断で書いたときと同じように、危険な判断ミスにつながっていたかもしれない。

予報を見なくていい、という話ではない。予報は、今日どちらの方向に外れる可能性があるかを考えるための出発点として使い、実際にどうするかは、山に着いてからの空の色・風の感触・肌にまとわりつく湿気で決める。今朝の土砂降りと、9時の急な晴れ間は、そのことを改めて教えてくれた一日だった。

次に予報を確認するとき、それが「今日の答え」ではなく「今日の傾向」でしかないことを、少しだけ思い出してもらえたらと思う。

この記事を書いた人

藤川翔(屋号:希翔)

今朝、実際に山でこの予報外れを経験した。晴れ予報を信じて登り、土砂降りに遭い、雨予報を信じて待機し、想定より1時間早い晴れに救われた一日だった。

この記事の裏話や、体験の背景はnote(山守ラボ)でも綴っています。